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2014年4月24日木曜日

STAP事件簿理研編(3) 理研は懲罰をできない






STAP事件簿理研編(3)
 理研は懲罰をできない



親は未成年の子供に対して「親権」という権利を持つ。自分の子供の財産などに対して権利を持つのだが、それには制限がある。あまりにも当然のことだが、親権者は「財産管理権」を行使するので、一定の「行為能力」をもつ者でなければならない。



つまり、「権利」とは、「権利を行使することができる能力」がある場合に限る。いくらお親だからといって、自分自身が財産管理ができないのに、子供の財産を勝手に処分することができないのは当たり前である。



それは親権のようなものばかりではなく、一般社会でも常識で、「泥棒が泥棒を裁くことはできない」とたとえで言われることもある。



今回のSTAP事件では、理研は「組織として当然、やるべきこと」をしなかった。やるべきことをしない組織が、「その雇用者の懲罰だけはできる」ということにはならない。こんなことを認めると社会正義、公序良俗を失うので、その影響は大きい。理研が「組織としてしなければならなかったこと」は次のように整理できる。



  • 任命責任の欠如: 理研は小保方さんをユニットリーダーというある程度、独立した研究ができるというグループの研究リーダーにした。(理研は記者会見で小保方さんを「研究者にあるまじき」と批判したが、研究者にあるまじきミスをする人を任命した責任を取らなければならない。)

  • 上司の職務怠慢: 理研は笹井さんという京都大学教授から転身した人を「小保方さんの論文をネイチャーに通すため」に「論文作成チーム」に所属させた(笹井さんの記者会見から)。小保方さんの論文は笹井さんがチームに加わる前に一度、ネイチャーに提出されて、掲載を拒絶(リジェクト)されている。ということは、その論文が「提出される論文が学問的に正しく、提出する価値があるか」を判断し、その後、具体的な助力をする以外にやり方がない。つまり、論文内容が不十分だから拒絶されたのか、論理や書き方が不十分だからかの判断が必要だ。笹井さんは論文としての価値があると判断して助力したのだから、論文内容を知らなかった(データに矛盾がなく、写真の加工(ネットのチェッカーが一週間ほどでわかるものを1年かけてわからなかった)にも気が付かなかった(武田は「写真が加工されていた」と言うだけでは不正でもなんでもなく「写真を加工しないと論文が通らない」という証明が必要だと考えている)。

  • 上司の能力不足: 小保方さんはユニットリーダーになる前に若山研究室で研究をしていた(笹井さん記者会見より)。その時に今回の論文をネイチャーに投稿している。この時には小保方さんは平研究員だったのだから、この論文の責任は若山さん(現山梨大学教授)にある。今回の問題となった写真3枚やそのほかのミスの多くは現論文で発生していると考えられる。笹井さんが参加してからの文章がコピペなら笹井さんに問題があり、ユニットリーダーになる前にコピペや加工があったなら「組織」としては若山さんに責任がある。大学教授になるためには、本人が論文と出すだけの能力とともに学生や研究生の論文をチェックしたり、修正したりする能力があるはずで、能力がある人がその能力を発揮できなかったのだから、職務怠慢である。

  • 特許の不正申請: 2013年3月10日に出された論文と同年4月25日に申請された特許はタイトルや発明者などから見て同一内容と思われるが、「提出すべきデータではない」というものを特許申請したということになり、組織として犯罪を行ったということになる。

  • 組織内の対立構図の創造: 理研は小保方さんとの意思の疎通を欠く状態で「理研のお金=税金」を使用して記者会見をし、笹井さんの記者会見も税金を使った。しかし、小保方さんの記者会見は小保方さんの個人のお金でおこなった。それなら、理研は小保方さんの記者会見を禁止すべきであった。つまり組織内の人間は、その組織を批判する記者会見を自由に開くことはできないし、逆に組織もそこに所属する人を「組織の公的なお金」を使って批判することもできない。また小保方さんの記者会見を認めるなら費用も負担しなければならない。その意味で、理研は税金を使って組織内の対立構図を積極的に公にしたのだから、組織としての体をなしていない。



まだまだ「理研が組織ではない」ということが多いが、「組織ではない理研」は「組織の一員の懲罰」ができないことは明らかで、いったん理研を解散し、もしくは経営陣を一新し、数年かけて「組織としての社会的な信頼性」を回復してからにしなければならない。それまでこの組織に「税金」を投入するべきではないと考えられる。


(平成26年4月24日)

(本日、理研の調査委員会の委員長が不祥事で辞任しました。でも、もともとここに書いたように理研には資格はなかったと思います。)

武田邦彦

(出典:武田邦彦先生のブログ





2014年4月23日水曜日

STAP事件簿理研編(2) 雇用者を貶める組織






STAP事件簿理研編(2)
 雇用者を貶める組織



「身内をかばう」必要はないが、かといって「身内ならでは」知らないことを事件が起こると暴かれるというのは辛い。人間の日常生活は「表面」と少しは違う。どんな美人でもトイレに行くと考えたくないが、それも事実だが、いくら事実でもその写真を公表されるのは辛い。



今回のSTAP事件、特に理研の委員会の記者会見は「組織の中で仕事をする若者」には大きな打撃を与えただろう。小保方さんが「悪かった」から「悪い」と言ったわけではなく、「社会が悪いと言っているので、悪いところを探した」ということだったからだ。



委員会が「不正」と認めたのに、2枚の写真が間違っていたことと、1枚の写真が加工されていたことだ。これが「悪意」であるためには最低でも、次のことが必要だろう。



2枚の写真は「単純ミス」だったか、「悪意」だったかは、「正しい写真がないか」、「正しい写真があっても、違う写真を使わないと結論が出ない」かどちらかである。「正しい写真はあった」し、「違う写真を使わなくても結論は変わらない」のだから悪意は存在しない。


写真を加工する目的は、「わかりやすくするため」か「ウソをついて加工しなければ結論が得られない」という2つがあるが、加工された写真は80枚の図表と4つのビデオの一つで、重心的な写真(これがなければ結論が変わる)というものではない。


動機が必要である。「悪意」、「捏造」などが存在するためには、「動機」がいる。論文は、2枚の写真と1枚の写真の加工を除いても論文は通るし、結論も変わらない。すでに持っている正しい写真を使わず、1枚の写真を加工する動機がない。


論文は小保方さんばかりか、若山さん、笹井さんなどが深く関与しているので、悪意が誰にあったかを特定する必要がある。


ところが、「実験ノート」という「悪意」とは無関係の内部事実を持ち出し、「研究が杜撰だった」という印象を与え、「研究が杜撰だったから悪意だ」という論理を使った。学者にはあるまじき論理展開で、委員会の「悪意」は明白である。



「実験ノート」を委員会が持ち出したのがなぜ「悪意」かというと、日常的な研究の状態で彼女の不利になる(本当はノートはいらないが)ことを暴いたからだ。「捏造されていなければ論文は通らない」というもっとも基本的なことは言わずに、「あり得ない」、「杜撰だ」と繰り返したのは「悪意」以外の何物でもない。



また、雇用者に関する事件なのに、事前に十分な調査をせず、「本人は承知しているのか?」という質問に「異議申し立てをすればよい」というのは組織ではない。理研が組織としての見識を持っていないのだから、彼女を懲罰する権利はない。形式的に組織だから権利が発生するのではなく、組織は組織としての言動を保つことが前提条件だ。



十分に聞きとり、「事実」についてできれば100%合意し、その上で判断し、その判断についても本人の了解を得て、それから外部に公表するというのは、本人をかばうというより「中立的方法」である。



その意味で、今回の事件は、理研に悪意があったのは明らかであり、マスコミが「大きな組織は叩かない」という原理があることを巧みに利用したものであることは明らかである。



(平成26年4月23日)
武田邦彦

(出典:武田邦彦先生のブログ






2014年4月22日火曜日

STAP事件簿理研編(1) 迷惑の原因は誰が作ったのか?





STAP事件簿理研編(1)
 迷惑の原因は誰が作ったのか?




なにか事件が起きたとき、その人が所属する団体(会社など)は、その事件で被害を受けた人に対して「会社として謝罪する」と言うことがある。その時は「このたび・・・を起こしまして・・・」と謝ることが多い。



今回の場合では「本来はネイチャーに論文を出しただけなので、格別、社会にご迷惑をおかけしたのではないのですが、理研が派手に記者発表をしたために、皆様に過大のご期待を・・・」というようなことになるだろう。



ネイチャーに論文がでることはあるので、それを派手に宣伝しなければ学術論文の一つとして扱われるので、格別「ご迷惑」をおかけすることはない。でも今度の場合、「理研」という組織が大々的に発表したので、テレビも新聞も「理研だから大きなことなのだろう」と思い、その発見に理研自体が疑問を持っているなど思いもしない。



だから、マスコミもマスコミだが、もし社会が迷惑を蒙ったとしたらそれは「理研だから信頼性がある」と思わせた理研の方であることは間違いない。



ところが、こともあろうに小保方さんの論文の「書き方」を理研自体が咎める記者会見をして、「悪意があるかもしれないので、調査委員会を作る」と言った。調査委員会を作るならまずは「派手な記者会見を提案した人、承認した人」を調査しなければならない。



次に、理研はほぼ同じ内容に特許を出している。特許というのは研究者が出すものではなく、組織が出すものだから、論文がおかしければ特許をまずは取り下げなければならないし、そんな特許を認めた人が理研の中にいる(この種の特許には一千万円を超える経費がいる)ので、税金を無駄使いした責任は重大だ。



つまり、理研は理事長まででて、何をわびたのか、論文がおかしければ特許はどうしたのかを最初に説明する必要があった。これだけでも理研にはなにか犯罪のにおいがする。



(平成26年4月22日)
武田邦彦
(出典:武田邦彦先生のブログ






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