2014年7月31日木曜日

【STAP騒動の解説 260731】 剽窃論 第一章 若干の具体的事件 (その1)



【STAP騒動の解説 260731】
剽窃論 第一章 若干の具体的事件(その1)



(このシリーズはブログをはじめて、「論文をネットに掲載する」というものの初めての試みです。通常、私が各論文よりはやわらかいのですが、ブログの文章から見ると専門的です。でも、音声ではできるだけ一般的な説明をしたいと思っています。この論文が「論文として引用対象になるか」という試みでもあります。もしお暇があれば少し聞いていただき、内容、難しさなどご感想をおよせください。


用語:剽窃=盗用=コピペ)


1.シャバン教育大臣事件
シャバンさん(女性で名前で呼べばアネッテさん)がドイツ連邦の教育大臣だったとき、すでに32年ほど前にチェッセルドルフ大学に出した博士論文に多数の剽窃があるとの投書があり、2012年、大学は直ちに調査を開始したが、剽窃は重大な個所ではないとした。この時、大学があまり大きな問題にしたくなかったのか、それとも本当に微細なことだったのかは不明である。
ところが、告発側はかなり執念深かったようで、自ら調べて剽窃が50か所、92ページに及ぶことを指摘した。なにしろ現役の教育大臣だったこともあって、「人格と良心」というタイトルのついた博士論文を再度、調査し、剽窃が故意になされたとした。論文のタイトルが「人格と良心」であり、問題になったのはその論文の剽窃(研究不正)であることからも、人々の興味を引いたことも理解できる。
さらに、一般人ならこれで終わったと思われているが、現職の教育大臣で大学の名誉教授でもあったことから、野党から追及され、窮地に陥った彼女は辞表をメルケル首相に提出、メルケル氏は涙ながらに辞任を認めた。政治の世界に博士論文の剽窃が問題になったこともあって、その後、今度は逆に野党の筆頭議員シュタインマイヤ氏が法学の博士論文に剽窃の疑義が問題になっている。
(注) この記事はどこかの報告書または論文を見て、私が理解したところをまとめて書いているが、事実をそのまま書いてある報告書なので、原報告書とこの私が書いた文章とは酷似している可能性がある。しかし、事実を記載している文章を見て、それをたとえ「自分の文章」として書き換えたとしてもその主要部分は同じになる。
もし、私がこの元の文章を探して、そのままコピーしてもあまり変わらないだろう。このように、原文のままコピーしたのと、それを見て自分が書き直したものと、ほとんど同じの場合、それが剽窃(盗用)に当たるかは、この剽窃論の中で明らかにしていきたいと思う。

2.ユホン・ソウル大学教授事件
ユホン教授は認知症の研究で有名でソウル大学医学部に所属している。彼がファーマコロジカルレビューという科学誌に2002年9月掲載された論文には600の引用文献が示されていたが、論文の2ページ第3節の文章で本来引用すべきだった論文を落としていた。
これを気が付いたのは大学院生だと言われているが、ユホン教授は学術誌側の自主的に申し出ていたが、学術誌側は「掲載されたときに抜けていた」ということで剽窃(盗用)と判断した。
600の引用文献を引いて論文を書く際に、1つでも落としたら不正論文となったことについて、ユホン教授が韓国のソウル大学であることから、アメリカ薬理学会が特別に厳しく判定したのではないかとも言われている。どのぐらいのミスまでが許されるのか、判定の基準は定かではない。
2014年のSTAP論文事件と似たところがあるが、STAP論文の場合には80枚の図表で3枚の写真が問題になった。著者はケアレスミスを主張し、判定は不正となった。基準があいまいで、人間が間違えをすることがあり、かつ査読委員がこのような間違いに対して責任を持たないということで、今のところ、剽窃の判断や基準に未熟なところがあることを示している。
なお、ユホン教授の論文は、アルツハイマーに与えるあるたんぱく質の機能を世界で初めて明らかにしたものとして高く評価されている。内容が立派な論文で、600の引用文献のうち、1つを落としたら不正論文になって取り下げになることとのバランスも問題になるだろう。
また一般的に言って、かなり高度で複雑な論文の場合、関連研究が増えてくるので引用数も多くなる。引用も直接的な論文引用と、「孫引き」と言ってある論文が引用しているので、オリジナリティをどちらに求めたらよいかがわからないようなケースもある。
(注)この事件の場合も、私はあるニュースを見て書いたので、原文と文章が似通ったところがある。しかし、そこを無理に変えると事実に違うことになるので、「剽窃」の危険はあるが、事実を重視した。オリジナルを引用しないのは、オリジナルがはっきりしないこともあるが、もともとこのような場合に剽窃に当たるかについてもこの論の中で整理を進めたいと思っている。

(平成26年7月31日)

武田邦彦

(出典:武田邦彦先生のブログ








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